去年ルノアールで  せきしろ (マガジンハウス)

去年ルノアールで  せきしろ (マガジンハウス)
2006/2/23 1刷 1500円(税別)
初出:「relax」2000/2月号~2004/10月号「今月のルノアール」
(加筆・修正一部書き下ろし)
装幀:小野英作 装絵:堰代昌幹 構成:辛島いずみ

runo
この当時、西荻窪在住と思われる著者が、いまは無き西荻北口ルノアールで妄想する、エッセイ風小説です。

「テレ東」深夜枠で、ドラマ化された人気作品とは知りませんでした。

本書の文庫版は、2005年2月以降の、西荻ルノアール閉店後の日々も(電車に乗ってまで遠征し)追加した完全版のようです。

アマチュア時代の著者は名のある「葉書職人」だったと思わせる、小心妄想風お馬鹿ネタは、紙数キッチリ。落ちの察しがつくこともありますが、ホラ話の職人芸を発揮しています。泉昌之の「かっこいいスキヤキ」を思い出す独白。

ルノアールを知らない読者が共感できるかは謎ですが、あの店を御存知の方には、如何にも的ニンマリかもしれません。

むかしユーミンが作詞のネタ探しに、ファミリーレストランや喫茶店で、お客の会話へ聞き耳をたてると聞いた記憶があるけれど、著者はルノアールで、取材と執筆を同時にこなしていたのでしょうか。

本書を読み、今は無き「談話室滝沢」へ行かなかったのが、残念に思い出されました。

この無念さは、破壊されたバーミアンの巨大石仏を見ることが出来ないのに匹敵するかもしれません。

ルノアールは一昨年キーコーヒーに吸収され、その後、あの文化に影響はあったのでしょうか?

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雨の狩人  大沢 在昌 (幻冬舎)

雨の狩人  大沢 在昌 (幻冬舎)
2014/7/25 1刷 1800円(税別)
初出:「北海道・中日・東京・西日本」各新聞 2013/1/1~2014/2/28
装幀:多田和博 装画:西口司郎

ameka

狩人シリーズ4作目読了。

佐江のキャラは無頼派で、もっと魅力的だった印象があるのですが、前作以前の「筋」の記憶も無いので、確信はありません。

無頼といえば今野敏氏の「隠蔽捜査シリーズ」。大森署のはみ出し刑事、戸高を思い出し、本作での佐江が、少し鮫島的になったようなイメージもあり、サブキャラの魅力が勝った本作でした。

事件の核心は前半で予想がつくとはいえ、著者の職人技に引っ張られる面白本です。

本書で示唆するマルB業界と我国の犯罪シーンに対する大沢在昌氏の警鐘は、恐ろしいことに核心を突いているのでしょう。

シリーズ継続もありそうなラストで、場合によっては大ラスの展開から、荒唐無稽の大風呂敷になる可能性もありそうです。

つづきが気になるシリーズといえば、やはり「鮫」。

書いて下さるのでしょうか。

追記:本書の紙質が既刊のそれより薄く、質感が違いました。コスト対策でしょうか。

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田舎暮らしに殺されない法  丸山健二 (朝日文庫)

田舎暮らしに殺されない法  丸山健二 (朝日文庫)
2011/5/30 1刷 560円(税別)
装幀:岡本健+ カバー写真:中田寛哉也 解説:三浦しをん

inaka

Urban lifeを快適に暮らす向きには無関係とはいえ、表紙画像リンク先を試し読みするば、別の意味で、大いに楽しめる本であると思えるでしょう。

あまりにもテンポ良く、一気に読み進めてしまう文章に、おっしゃることは総て御尤も。妄想を完膚なきまで打ちのめし、何時までたっても「村社会」から抜け出せない、ヒューマニズムとデモクラシーが未成熟な、自律した自己が未完成な読者を、とことんお叱り下さいます。

稲見一良氏や野田知佑氏に思いをはせ。自律には経済力が不可欠で、それさえOKなら問題なく「人間到る処青山あり」であっても、社会的動物の人間、否、いじめ大好き、21世紀であっても「KY」という言葉が、ティーン・エイジャーから生まれる土壌では無理なことなのでしょうか。

もっとも、友達が出来ない筆者に孤独の耐性はあっても、生存限界瀬戸際の経済力では、何れにしても無理なわけで、そもそも経済力の無い人間に自律は不可能か。

なぎら健壱氏の「弱い者は皆薄暗い 茶店の隅で 珈琲を飲みながら考える 楽になる事を」という名曲。「負け犬」を思い出しました。

夢も希望も無い、悲しい限りの現実です。

本書を読了し、丸山氏の暮らす近くに引っ込んだ知人に、リアルな話を聞ける機会があればと思い。NHK「鶴瓶の家族に乾杯」をながめては、優しそうな村人へ疑いの眼差しを向けるの気づき、国政選挙のあれこれを妄想するのでした。

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憎悪のパレード  池袋ウエストゲートパークXI  石田 衣良 

憎悪のパレード  池袋ウエストゲートパークXI  石田 衣良 (文藝春秋)
2014/7/15 1刷 1500円(税別)
初出:「オール読物」2013/2・6・7・9・10・12月号~2014/2月号
写真(カバー・目次):新津保建秀 装幀:関口聖司 イラスト:北村治

iwgp

IWGP11冊目をやっと読了しました。マコトの活躍を楽しむ、麗しのマンネリは幸せです。

ただ、9月に読んだシリーズ9冊10冊目で感じた危惧を、マコト自身が口にするに至り、未読のスピンオフ「キング誕生」が問題を解決して欲しいと、読者エゴを再確認しました。

集録は実際に池袋で起きた事件のニュース映像も記憶にある、脱法ハーブをテーマにした「北口スモークタワー」。パチンコ依存者の「ギャンブラーズ・ゴールド」。ネット・ビジネス搾取を扱った「西池袋ノマドトラップ」に、ヘイトスピーチがテーマとなる「憎悪のパレード」の四話でした。

余談ながら、筆者はつい最近、大学生のころからパチンコで生活してきた、40歳代後半の方と話す機会がありました。

羨ましくも「手に職」そのもので、パチプロ一筋、経済的に成立してきた凄さに驚くと同時に、勝負師のイメージの対極にある温厚な方だったので、世の中には未知の才能と多様性、生存力を備えた人がいるのだと、簡単に淘汰される側の、自己の不甲斐無さを再認識しました。

本書シリーズ初期のころ、マコトの言葉はIWGP世界で語られる躍動を感じたのが、少し分別くさく、ニュース・ショーでコメントする石田氏の印象が重なり、がんばれマコトと、エールを送ります。

シリーズ・ファンのエゴです。マコトのブクロでの活躍に、今後も期待しております。

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この時季 読みたくなる本のこと

花見川のハック  稲見 一良  (角川書店)
1994/7/5 1刷 1359円(税別)

ガン・ロッカーのある書斎  稲見 一良  (角川書店)
1994/10/11 1刷 1359円(税別)
初出:「ガン・ロッカーのある書斎(ミステリマガジン)」1983/1月~12月号
「ミッドナイト・ガン・ブルー(モデルガンチャレンジャー)」1983/9月~1984/8月号

帖の紐(たとうのひも)―稲見一良エッセイ集 (中央公論社)
1996/9/10 印刷 1996/9/20 発行 1165円(税別)
初出:「産経新聞」1992/4/3~1993/7/28

セント・メリーのリボン (新潮文庫)
1996/2/1 1刷 427円(税別)
初出単行本:1993年6月(新潮社)

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tatou  st01 st02

この季節になると、稲見一良作品を読みたくなる。

「セント・メリーのリボン」と「猟犬探偵」。
「ダック・コール」や大人の童話(?)「男は旗」に浸った。

その勢いで、稲見氏が亡くなる直前まで病床で書いた、未読のエッセイ集や「花見川のハック」を読んだ。

初期のエッセイ「ガン・ロッカーのある書斎」で、稲見氏がこだわり、好きだった銃やナイフといった道具や、映画・小説に関する知識の数々を読み、取上げられた作品のオリジナルに触れたい思いに駆られ、「帖の紐」で小説の卵となるエピソードを感じとった。

猟銃や拳銃の豊富な知識は、それらを扱った世の小説や映画の、野暮な間違えをエッセイで嘆いている稲見氏は、ホンダ・シルクロードやNV750を所有され、ご自身の癌が見つかる直前、オートバイで大阪へ向かうほと思い入れがあるのに、何故か「花見川のハック」集録の「曠野」に、誤植とは思えない間違えを見つけた。校正落ちなのだろうか。

舞台をアメリカにしたそれの210ページ。
『男はふと思いついたように「豆食うかね」と言って立って行った。バイクから缶を一つ持ってきた。バイクはトライアンフだった。ドイツ製の名車だ。』

会話終盤、別れ際211ページ。
『男はトライアンフに跨った。「良いモーターサイクルだそうだな」と俺が言った。「ナチスから分獲ったんだ」』

初出は1994年「野生時代5月号」。没後2ヶ月の掲載となる。

読者には思い及ばない、吐血し混沌とした意識と体調の闘病生活から、素晴らしい小説を残した稲見氏は、横向きの病床で執筆されるさまを、夢現にあるとエッセイに書かれている。

癌発病からの短い生涯に、素敵な本を残された稲見氏。
世に善をなし、人々に必要な人が病に苦しみ、短命のうちに去っていく。

筆者の身辺でも、今年は春先に一人。そして、盛夏にまた一人と、二人の知人が逝った。

なぁ、Yよ。そっちって、あるのかい?

むかし、Sの小父さんの手相見で、「人生思うが侭」と云われたと、高笑いしていたことを思い出し、あんたが逝った知らせを受けたとき、一瞬罰が当たったのかと思ったほど、欲望の赴くまま、好きに生きたように感じるけれど。思うが侭だったのかい?

こっちは「晩年が良い」と云われたけれど、気づかぬ罪を重ねた報いに、紛れも無いデッド・エンドだ。

人のため、人を助けることに邁進していたMさんが逝く不条理に、世界を覆う不幸や理不尽に、辻褄が合わないと嘆くのは、多忙な神の小さな齟齬を責めることなのか。

自業自得、身から出た錆びが救いを求める、身の程知らずの悪あがきの自覚はあるけれど、いま、Mさんと話が出来れば、どんな言葉を聞けるのだろう。

そして、Yよ。あんたの起こした騒動が、永遠の謎になったけれど、そっちに逝ったら話を聞けるのかね。

幸せの絶頂で、勝ち逃げしたような去り方が羨ましい。

あんたは立派な大人として全うしたのだと、涙する人を見て、何者にも成れなかった己の手遅れに気づき、順番が逆だ、こっちはいつまで生かされるのかと、はやく消えて無くなりたい心境に、奇跡の日々は過ぎ去り、凍える季節に呆然と、どうやら人生を失敗した負け犬の遠吠えと自己憐憫。幸運は使い果たしたのかとこの未練。

まったく無駄に生きている。最低だ。

あんたの娘から聞いたけれど、最後に病室で交わした会話が、
「お酒もタバコも止めて、お医者さんの言うこと、ちゃんと聞いてね」と言うのに。
「それはどうかな」と答えたと、出来すぎたエピソードまで残して逝くとは。

生きているのが恥かしい小心者が孤独を嘆く。
憫笑しているかい。

(Triumph :ロンドンに設立され現存する最古のオートバイメーカー)

hata ryou

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ペナンブラ氏の24時間書店  ロビン・スローン/島村浩子:訳  (創元社)

ペナンブラ氏の24時間書店  ロビン・スローン 訳:島村 浩子   (東京創元社)
2014年4月25日 1刷 1900円(税別)
装画:スカイエマ 装幀:中村聡
Mr.Penumbra’s 24 – Hour Bookstore 2012

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本好きが楽しめる500年越しの謎を解き明かす冒険。

なんだか気になる紹介文と可愛い装幀に、ジョン・ダニングのジェーンウエイ・シリーズや、ビブリア・シリーズ的薀蓄を想像しながら読んでみました。

まぁ、確かに極めて多少の薀蓄はあるものの、アメリカの、ただいま現在のオタクをくすぐるかもしれないファッション性。ハッカーや超ベストセラーの魔法使いファンタジー小説にRPG。GoogleやWebプログラムに(Rubyなる日本人が作った言語は知りませんでした)、IphoneやKindle・Macといったアイテムで修飾し、もってまわった小ネタと、思わせぶりな先送り満載で、スピードを感じず斜め読みしてしまった筆者の感性は、すでに新鮮な感受性が枯渇しているからなのかもしれません。(アメリカのオタク層にも村上春樹の人気があるのですね。)

IWGPのマコトのような語り口や、クドカン的小ネタの積み重ねは好きなのですが、紙本と電書の未来を示唆する展開を、若干期待していただけに、500年の謎の、この落ちは如何なものなのでしょうか。

扱うアイテムの鮮度が、あまりにもただ今現在なだけに、本書がエンタメ本として500年生き残る可能性は厳しいかもしれません。

高評価の本書です。以上はあくまでも読解能力が無い筆者の、悲しい読後感の記録です。

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勇魚 / 盟約 / 遭敵海域 / 特務艦隊  C.W. ニコル (文藝春秋)

勇魚(いさな)  〈上・下巻〉  C.W. ニコル  (文藝春秋)
1987年4月15日 1刷 1300円
盟約 〈上・下巻〉  C.W. ニコル  (文藝春秋)
1999年9月30日 1刷 1905円(税別)
遭敵海域 C.W. ニコル  (文春文庫)
2005年5月10日 1刷 781円(税別)
特務艦隊 C.W. ニコル  (文春文庫)
2008年5月10日 1刷 800円(税別)

isana

星野博美氏の「コンニャク屋漂流記」で、江戸時代の和歌山の海へ思いが飛んだせいか、御無沙汰していたC.W. ニコル氏の本を続けて再読しました。

「勇魚」執筆のため、著者は舞台となる現在の和歌山県太地町に1年滞在し、幕末から明治にかけて時代に翻弄された主人公、鯨漁師達太夫の長男甚助の物語を紡いだわけですが、たんに歴史秘話モノの傑作で片付けられない、実在の人物の記録としか思えない大名作です。

出版当時8ヶ国語に訳され、日本の捕鯨文化を世界へ伝えた本書が、当時より一層重要な良書でありながら、現在絶版というのは悲しいかぎりです。

捕鯨が世界から叩かれ、風前の灯となっている今だからこそ、何も知らない日本人を含めた世の人々に、本書を読んでもらいたいものです。

幕末から明治にかけての史実と、鎖国のさなか琉球・中国をへてカナダへ渡る甚助、後のジム・スカイの人生に、感動しない読者はいないでしょう。

そして、こんなに密度ある物語はめったにない名作と感じ入るでしょう。

「勇魚」に続く「盟約」「遭敵海域」「特務艦隊」は、甚助の三男、カナダ生まれの銛一三郎を通して、日本海海戦を経て第一次世界大戦終結までの甚助の一生を描くことになりますが、「勇魚」なくしては成立せず、諜報冒険小説の要素が強くなり、やはり物語の重厚さでは「勇魚」に及ばないかもしれません。

そうはいっても、筆者はこの一代記の最終編となる「特務艦隊」に記された日本海軍の墓所を、地中海はマルタへ訪ねたほど、のめり込んだのも事実です。

久しぶりに再読し、世界遺産となったヴァレッタ旧市街の情景が蘇りました。

「盟約」「遭敵海域」「特務艦隊」は表紙画像リンク先で、試し読みが可能です。

ぜひ「勇魚」も探して、お読みになることをお薦めします。

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(盟約・遭敵海域・特務艦隊 表紙画)リンク先試し読み可

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アブラコの朝 - 北海道田舎暮らし日記   はた 万次郎 (集英社)

アブラコの朝 - 北海道田舎暮らし日記   はた 万次郎 (集英社)
1995年6月20日 1刷 1359円(税別)
初出:「田舎暮らしの本」(宝島社)1992/12月号~1994/7月号
初出時タイトル「暮らせばわかる!!- はた万次郎の北海道過疎地日記」
装幀:須田曻 装画・イラスト:はた万次郎 口絵写真:吉田勝美

aburako

漫画に知識がなく、こんなに素敵な漫画エッセイがあるのを知らず「ウッシーとの日々」を読んで以来、はた万次郎氏の本を探していました。

本書はその漫画エッセイと同時期に書かれた、文章主体の作品です。各々を補完するような性格もあり、両著を併せて読むと、幸せが倍増すること請け合いです。

都会(東京)での生活から、北海道の過疎地・下川町へ移住した日常が語られるエッセイですが、30歳で移り住み、すでに20年が経過した現在。著者の近況や思いをつづった新作を読みたいと調べてみましたが、Twitterで時々発される作品以外は、新作の発表がなさそうなのが残念でなりません。

インターネットの恐ろしい機能で探してみると、作品に出てくる建物の隣に新築された様子。

ひと安心しつつ、是非とも新たな作品の上梓をお願いしたいかぎりです。

shimokawa

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悪人   吉田 修一  (朝日新聞社)

悪人 吉田 修一  (朝日新聞社)
2007年4月30日 1刷 1800円(税別)
初出:2006/3/24-2007/1/29 朝日新聞

akunin

3年前の正月、呼子の烏賊料理屋で食事をする機会があり、偶然入ったその店で、映画「悪人」のロケがあったのだと知った思い出があります。

原作も映画も知りませんでしたが、その後「西日本横断ブログ旅」で、懐かしい呼子の様子を眺め、今回本書を読んでみました。

映画化されるほどのヒット作なのでしょうが、それにしても、この作品が新聞連載小説であったとはと驚き。救いの無い、なんともやりきれない、後味の悪い小説であることかと思いました。

気持ちがささくれ立ち、連載していたメディアを支えているであろう社会的地位や所得層の頭にあるヒューマニズムは、二極化された階級社会となったこの国では、安全圏のそれであることが固定化されてしまったのかと、暗澹たる読後感を残す、筆者には向かない本書でした。

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フクロウは夜ふかしをする / ピーナッツバター殺人事件

フクロウは夜ふかしをする  コリン・ホルト ソーヤー / 訳:中村有希  (創元推理文庫)
2003年3月28日 1刷 920円(税別)
カバーイラスト:砂原弘治 Murder by Owl Light 1992

ピーナッツバター殺人事件  コリン・ホルト ソーヤー / 訳:中村有希   (創元推理文庫)
2005年6月17日 1刷 940円(税別)
カバーイラスト:砂原弘治 The Peanut Butter Murders 1993

yofukashi nats

コリン・ホルト ソーヤーの「老人たちの生活と推理シリーズ」3・4作目を読みました。

安定した麗しのマンネリを楽しめる「やっとかめ探偵団」「紅雲町珈琲屋こよみシリーズ」といった、おばあちゃんモノです。

いくら居心地良い高級老人ホーム「海の上のアムデン」でも、これほど頻繁に連続殺人事件が周辺で起きたら、経営に影響しそうですが心配御無用。

ファンタジー世界の元気な老婦人たちは、嬉々として活躍いたします。

ところで、アメリカの御老人は、これほど高カロリーな食事を、一日三食とっているのでしょうか。

本書はおばあちゃんミステリーですが、優雅に暮らす住人たちの食の様子は「食べ物小説」としての楽しみもあります。

頻繁に登場する美味しそうな御馳走シーンは、あっさりした和食が恋しくなるほど、日本人の感覚からは、健康への影響が気になるメニューの数々ではあります。

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