糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ 吉永 南央 (文藝春秋)
2014/8/25 1刷 1500円(税別)
初出:「別冊文藝春秋」2013/11月号~2014/7月号
装幀:野中深雪 装画:杉田比呂美
「名もなき花の―紅雲町珈琲屋こよみ」に続く、シリーズ4冊目を読了しました。
やはり草さんのお店は珈琲豆屋というより、陶器のセレクトショップである性格が強いですね。でなければ、試飲珈琲の大盤振る舞いで倒産しちゃいますもの。
小説世界とはいえ心配には及ばず、お草さんは商売上手の経営者で、安心し尊敬してしまいます。
書名の「糸切り」は、ロクロから作品を切り離す時に使う糸の事(或いはその行為)だとは、読み進むまで知りませんでした。
当然筆者は陶芸にも無知で、本書で扱われる焼き物を、調べながら読んでいました。
珈琲に例えると「紅雲町珈琲屋こよみ」の世界は熟成が進み、しっとりとしたボディーも出て楽しめました。
作品の落ち着きは人の哀れに思い及ばされ、ファンシーな装幀(画)と乖離してきているかもしれません。
事件に巻き込まれはしても、お草さんの人生は現役で、人に囲まれ羨ましい限りです。